子どもの心のコーチング 一人で考え、一人でできる子の育て方 菅原裕子

【書評】子どもの心のコーチング 一人で考え一人でできる子の育て方 菅原裕子著



どう子育てを行えば、自立した子どもへと育てることができるのか。

それは、パパやママにとって、子育てを行う中での目標やゴールと言っても過言ではないように思えます。

今回は、以下の本を読んで、どうすれば自立した子どもに育てることができるのかについて考えてみました。


”子どもの心のコーチング〜一人で考え、一人でできる子の育て方 菅原裕子 著”



ポイント(目次)
  • 本の概要
  • 魚をあげるのではなく、魚の釣りかたを教える
  • 親の自己肯定感の重要性
  • まとめ


本の概要

著書:菅原裕子

NPO法ハートフルコミュニケーション代表理事として、1977年より人材開発コンサルタントとして、企業の人材育成の仕事に携わる。

本書では、コーチングという、人間の能力を開発するコンセプトを子育てに応用し、子どもの「生きる力」を育むことを紹介している。親の役割や自己肯定感の向上、しつけの仕方、子どもとのコミュ二ケーションの取り方、親の幸せなどの側面が子育てにおいて非常に大切にだと言うことを述べている。



魚をあげるのではなく、魚の釣りかたを教える

本書では、国際開発や援助の分野でよく比喩として使われる、”魚をあげるのではなく、魚の釣りかたを教える” と言う表現にて、子育てにおいてもその考え方が重要であることを述べている。

その表現の意味は、魚をもらっているばかりでは、その供給が止まった時に、生きていくことができないということである。つまり、自分自身で魚を釣ることができれば、どのような環境であろうと生きていけるのである。

例えば、子育てにおいて、なぜハウスルールを守らなければならないのか、親のお手伝いをしなければならないのか、勉強をしなければならないのか、など、子供が理解する前に、親がいちいち指示をすることが、魚をあげている例となる。

そのような子育てからは、社会で応用できるスキルや学びなどがない、と言うことである。

しかし、親がその指示出しをやめて、例えば、ハウスルールとして、子供がトイレ掃除をしなければならない状況があったとする。

そして、子どもが掃除をしなかった場合、親が命令口調でルールだからやりなさいと行動を促すのではなく、日に日にトイレが汚れていく状況をみて、子どもがどう感じるのかについて一緒に考えるのである。

また、子どもが掃除をしなかったことで、パパや兄弟が不快な思いをしていることなどを知ることで、トイレ掃除をするようになり、ルールを守るようになるのである。

最終的には、それが社会規範の遵守といった、社会的スキルの一つとして活きていくのである。つまり、子どもに ”魚の釣りかたを教える” という子育てである。

この繰り返しによって、子どもがチャレンジを自ら克服できるようになり、あらゆる困難にも適応できる素地が備わるのではないでしょうか。

これは、末永幸歩氏の著書である「「自分だけの答え」が見つかる13歳からのアート思考 “ 」での主張と似ている。

著者は、「表現の花」の下には、「興味の種」、「探究の種」があるという。

社会で成功を手に入れる人や幸せを手に入れる人は、急速に変化する社会の変わりゆくニーズの中で、自分が欲しい結果のために(表現の花)、何をする必要がるのか(興味の種)、そのためにどうすべきか(探究の種)を知っているため、社会がどう変化しようとも自己実現の術を持っているのだという。

つまり、魚だけをもらっていると、その「表現の花」の下に、「興味の種」や「探究の種」が撒かれていることを知らないため、その「花」しか見えないのである。



親の自己肯定感の重要性

自己肯定感とは、一般的にあなた自身が自分のことが好きかどうかというように定義される。

そして、本書では、親自身の自己肯定感が低い場合、その親のご両親の子育ての影響によるものが大きいという。

また、以下のように述べている。

“「今のあなたには選択があります。一人の気づいた人として、親の影響下にいつまでもいる必要はありません。自分でこれからの自分を選べるのです。”

では、なぜ親の自己肯定感が大切なのか。

それは、親自身が自己肯定感が低いと、自身の子どもの自己肯定感を育むことができず、結果として、子どもの「何かにチャレンジしてみよう」という自己効力感へも影響を及ぼすと言われているからだ。

しかし、どれくらいの親が自身の自己肯定感の重要性について把握しているのか。

また、現在の日本における経済格差の一因は、親の自己肯定感の格差が負の連鎖として起こしているものとも言えるのではないだろうか。

なぜなら、まず、自身の自己肯定感の重要性を知っている親とそうでない親で、自己肯定感に格差が生まれる。

次に、いずれかの親のもとで育った子どもの自己肯定感に格差が生まれる。

そして、その子ども間で、将来社会の中で積極的に生き、何にでも挑戦しようという自己効力感においても格差が生まれる。なぜなら、自己肯定感が、自己効力感を後押しするエネルギーとなるからだ。

最終的にその積りに積もった格差によって、子どもが社会に出て、自分のやりたい仕事を企業するのか、または、人様の会社に就職するのか、という形で現れる。

両者の違いは、自分でお金を作り出していくための経験やスキルを身に着けることができ、後者は限定的なスキルしか身に付かないということである。

つまり、前者は、魚の釣りかたを知っているということであり、後者は、魚を与えられているに過ぎない。

また、究極的に、前者と後者で幸福度にも格差が生まれてくるのではないだろうか。

前者では業務上のストレスも自分を成長させるために必要不可欠と考える傾向にあるが、後者では、単にストレス(身体に害を及ぼすもの)としてでしか捉えられない。

このように、子育てにおいて親自身の自己肯定感が負の連鎖として子どもの将来へも影響を与え、経済格差、幸福度という観点で、格差を生むのである。

だからこそ、親は、そのような誰も教えてはくれない子育てに関する情報を、自分で本を読んで学び、子育てのコミュニティで情報を収集したりしながら、常に積極的に学ぶ姿勢を持ち続けることが重要ではないだろうか。

本書は、そのような親としての責任を教えてくれた一冊である。



まとめ

今回は、自立した子どもを育てる子育てについて考えてみました。

子どもに、魚をあげることに徹するのか、それとも、魚の釣り方を教えるのか。

そして、親自身の自己肯定感について、どのように対処していくのか。

親の自己肯定感に関する本など、多く出版されているので、一読されるのをおすすめします。

なんだか子育てが難しく感じてしまうかもしれませんが、情報を収集して、自分の子どもの子育てに実践していくことは重要です。

社会ではすでに、子どもの貧困や経済格差として影響が出ています。子どもの将来を明るくできるように、いますぐできることから、一緒にはじめていきましょう。